もうだめだ
テスト中、問題にてこずる僕、メガネをいじりながら解答を頭の中で組み立てる、メガネを外したりかけたり外し損ねたり試験官にむかってメガネを投げるいやいなやさらにメガネケースを投げつけたくなる衝動を抑えたりしているうちにレンズが指紋でべたべたになった、そして僕は思い出す、東京で一人暮らしを始めるために実家を飛び出す日、妹との別れの思い出、『お兄ちゃん・・・』と僕を呼びながら僕のメガネを外す、ベタベタ、ベタベタ、僕のメガネのレンズを触りまくる妹、『はい、これを私だと思って頑張ってね!』、え?妹の指紋を妹だと思うの?正気?ねえ?すっごく目の前のお前がぼやける、拭いていい?いいよね?はい、拭いたー、妹よく見えますー、『ひどい!あたしが消えちゃった!クレジットカード出せ!』と指紋が消えた事に怒る妹、そのまま『あーあ、しょせんは・・・・』とため息をつきながら家に入る妹、ぽつんと俺一人バス停まで歩くよ、そんな懐かしい記憶がよみがえり、落ち着いた僕はテストに再び向かう、がんばるぞ!ああ!メガネのレンズがフレームから取れて床に落ちたー!!せつなっ!