つけめん持ち歩き女
中学2年生の妹と駅のホームで電車を待ちながら食事を取ることにした。
せ 『お腹空いたなあ、おにぎりでも食べようかな。』
妹 『いいな!そのおにぎりの具は何!?生きたままのタコ!?』
せ 『俺の口の中で吸盤に米粒つけたタコに暴れられてたまるか!』
妹 『そっかー!私つけめん!』
せ 『どう考えても携帯食じゃないやろ!』
妹はカバンの中から麺が入った弁当箱と黒い液体が入ったペットボトル2本を取り出した。妹はペットボトルをじっと見つめて悩んでいる。以前から『リトマス試験紙は紙の中で最強の紙だ、私のテストの答案用紙よりも世界を知っている』とよく言っている妹はリトマス試験紙を取り出してペットボトルの液体を調べている。でも、どうやらリトマス試験紙の使い方を知らないらしくて『いでよリトマス!』と叫んでは途方にくれている。意を決した妹は片方のペットボトルを一気に飲み始めた。
妹 『ぶはっ!こっちはめんつゆだったか!』
せ 『一目でわかるようにしとけよ!っていうか、一気飲みじゃなくてちょっと舐めればいいやん!』
妹 『お茶と間違えてめんつゆを飲んでしまうトラップを仕掛ける母親の冷蔵庫感覚を携帯してしまったぜ。』
せ 『どんだけ無駄なダメージやねん。』
妹 『あー、じゃあ、こっちがオイスターソースか。』
せ 『どっちもお茶じゃないのかよ!なんで調味料を二つも大量に持ち歩いてるねん!』
妹 『え、お兄ちゃん、オイスターソース好きだと思って・・・』
せ 『え、何その突然な優しさ。それに別に俺オイスター好きじゃないんだけど。』
妹 『あ、間違えた、オイスター狂いはクラスメイトの高橋君だった!』
妹はオイスターソースを眺めながら頬を赤らめている。僕はそれを見て少し嫉妬した。明日からオイスターソースを一日一回舐めようと思う。
妹 『じゃあ、つけめん食べよーっと。』
せ 『まじかー。』
妹 『一人で食べにくいから、お兄ちゃんめんつゆ持ってて。』
せ 『えー。』
妹は僕の両手にめんつゆをぶっかけようとした。
妹 『容器無いからお前の両手でめんつゆすくえや!真っ黒い池を作らんかい!』
せ 『ええええ!俺今から電車乗るの手びちゃびちゃなるやん!』
妹 『そっかー。あ、じゃあさ、めんつゆを飲んで口の中に溜めてよ、あ、違う、これ高橋君と一緒につけめん食べる時の食べ方だ!』
せ 『高橋とどんだけ付き合い深いねん!』
妹 『まだ手をつないだこともないんだけどね!めんつゆでしか繋がってないの!』
僕は妹にめんつゆを入れる容器を携帯させようと思った。高橋君の家にも容器を送りつけようと思う、代引きで。