大阪のローマピザ職人しもせのホワイト飲食経営論的な何か

年商2億円・年間休日130日のホワイトなイタリア居酒屋とラーメン屋を6店舗経営/本職ローマピザ職人/元飲食広告制作サラリーマン/損益分岐点の低いローコストほのぼの飲食経営スタイル広めて、飲食業界を過労しなくても成功する世界にしたい/全国750社参の飲食経営勉強会の2019年MVP経営者💖←参加企業募集中(個人店OK)

『今日はわらってくれてありがとう』、って言いたいんだ、毎日。

イタリアン、と言ってもメインはピザなバールをやろうとしているのだけど、何でイタリアンなのか?ってのを考えると、なんでだっけなーって自分でもよくわからなくなってたので、思い返してみることにする。


高校一年生の頃、僕は怪我を理由にサッカー部を辞めたのだけど、驚くほどあっさりと怪我が完治してしまってヒマを持て余していた。僕はサッカーが大好きなんだけども精神は体育会系ではなく、完全な文化系草食男子だったもので、辞意を気合いで覆してサッカー部に戻ることなどせず帰宅部として堂々と映画を延々と見る日々を過ごしていた。朝4時まで映画を見て、朝7時に起きてた。サッカー部の顧問の前では足をひきずったふりをしていたつもりだったけど、あれは寝不足と昨日見た映画で頭がいっぱいでまともに歩けなかっただけかもしれない。


当時の僕は非常に根暗で(今でもそんなに変わらないかも)、世界にはこんなにも素晴らしい文化がたくさん満ちあふれているのに僕はなんで何もしてないんだってずっと悩んでた、けど、何もしてなかった。たぶん、『本気を出すのはまだここじゃない』とか思ってたんだと思う。なんて、もったいない!って今だったら言えるけれど、当時は言えなかったんだ。ああ、素晴らしい映画はたくさんある。僕は一歩も近づけない、見る度とおざかるのさ。

グッドフェローズ [DVD]

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ある時『グッドフェローズ』という映画を見た。スコセッシ監督のマフィア映画。こんなシーンがある。牢獄に入れられたマフィアの3人が、牢獄の中でイタリア料理を作りはじめたのだ(!!)。そして、その3人が『にんにくのスライスの薄さ』にこだわって喧嘩をしたりするんだ。にんにくは薄ければ薄いほどオリーブオイルにとけるものだから。マフィアは捕まっても根回ししてりゃ牢獄の中でも自由なんだなーって思うと同時に、何でこいつらこんな状況でイタリア料理を楽しんでるねん、って強く思ったのだった。なんだかうらやましかった。イタリア人が砂漠でわずかな水を手に入れたとき、飲まずにパスタを茹でるお湯にしてしまう、っていうジョークも好きだ。何だかイタリア人の感覚が好きだ。ツッコミをいれたくなる。かわいらしい。


これが原体験だ。


僕はその後、イタリアに強く興味を持つようになった。ペルージャ時代の中田英の試合を全部見るほどもともとサッカーが好きなので、イタリアに関する知識はそこそこあった。ビバカルチョって漫画も良かったなあ。


イタリア人が出てくる映画を好んで見るようになった。ニューシネマパラダイスゴッドファーザーみたいな、有名な映画を片っ端から見ていった。そんで、出会ったんだ、今でも僕が一番好きな映画俳優で、映画監督、ロベルトベニーニに。


ジャームッシュ監督(素晴らしい映画ばかり!)の作品に『ダウンバイロー』という映画がある。刑務所から脱走した3人のロードムービー。その中にベニーニはひょうひょうとしたイタリア人役で登場する。とてもキュートで、どれだけ困難で生き抜くことが難しい場所でもベニーニがいれば優しくてまぬけな花が咲いて、気持ちが軽くなる。これはユーモアだ。人の気持ちを優しくさせるとは、なんて素晴らしいことなんだろう!僕はベニーニの映画を全部見た。


ライフ・イズ・ビューティフル [DVD]

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ベニーニの人間性が一番強く出た『ライフイズビューティフル』に出会った。後半30分は好きじゃないんだけども、前半1時間は僕が今まで見た映画の中で最高潮に好きだ。これ以上素敵な優しい愛情に満ちあふれたキャラクターはいないと思う。愛って素晴らしい!根暗な童貞だった僕はそう思った。


人が最高の笑顔をする瞬間って、どういう時かって?そりゃ、好きな人と、美味しいものを食べている時さ。ベニーニは実に美味しそうにご飯を食べる。とても愛おしいシーンだ!僕は最高の笑顔を見た。最高の笑顔を知った時、そこにはイタリア料理があった。僕はイタリア料理を食べたくなった。


ふだん着のイタリア料理―ギオさんの台所だより

ふだん着のイタリア料理―ギオさんの台所だより

我が家は貧乏一家でイタリアンなんて全く知らなかった。ナポリタンしか知らなかった。外食経験すらほとんど無いのに、本物のイタリアンなんて知るわけが無い。うん、まあ、外で食べれないなら、中で食べればいいじゃない。僕は古本屋でイタリアンのレシピを買ってきた(今でもその本は持ってるよ)。僕は未知の料理を、本を灯りに突き進む。2時間かけて一品作り上げた。


その時に食べたカポナータの味が忘れられないのさ。


冷蔵庫に余ってたクズ野菜をかき集めて、トマト缶をぶちこむ。野菜の水分だけでことこと煮込むのさ。弱火で、根気よく、弱火で。ずーっと。映画を一本見終える頃に、出来上がってるはず。僕はベニーニの映画を見ながら、だけど、鍋の様子が気になって、何度も台所に戻ったりしていた。晩ご飯を食べた後にいきなり料理を始めてそわそわしてる僕を見て、母親は不審がる。妹はへらへらしている。父親は今日も帰ってこない。


僕はその時の味が心に残っている。ぎっしりとした美味しさだった。クズ野菜がじっくりと力をふりしぼって美味しい料理になってくれた。他にも作ってみたいなあって思ったけれど、なかなか出来なかった。だって、アンチョビとか高いんだもの。


そんな時、近所にイタリア料理のレストランが出来ると聞いた。高校生でもバイト出来るらしい。僕は即座に応募して、残りの高校生活をそこで過ごした。イタリアンって言っても、サイゼリヤだったけどね!(でも、成長中のチェーンを中から見れたのは素晴らしい経験だった、僕が入った頃はまだ200店舗だったしね)


その後、大学で東京に行って、東京のイタリアンレストランでピザ焼きをしたりして、そんで、今に至る。そうか、僕がイタリアンで勝負してみたい理由ってそこか。


僕が知っている最高の笑顔のそばには、イタリア料理があった。そんな美味しいものをみんなで食べれば、最高に楽しいんじゃないかな。笑顔であふれようぜ。イタリア料理を食べる場所は笑顔で満ちあふれているに決まっているのだ!


とても素敵だね。


僕はロベルトベニーニみたいな最高の笑顔が世界中にあふれればいいのにと思っている。だから、僕が作り出すお店の名前はベニーニを意識して作ったんだ。


『ファルピテ』


『優しい茶番劇』という意味さ。あなたに笑ってもらえるならそんな幸せなことはないんだよ、そりゃもう必死で考えるさ。僕はそんな名前の場所で美味しいイタリアンをみんなに食べてもらいたいんだ、そんで毎日こっそり小声で言うんだ、『今日もわらってくれてありがとう』。


と言いつつ、カツ丼食べたいなー、今。ラーメンもいいなー。美味しいもんは何でも好きやー。ピザもパスタも良いなー。