大阪のローマピザ職人しもせのホワイト飲食経営論的な何か

年商2億円・年間休日130日のホワイトなイタリア居酒屋とラーメン屋を6店舗経営/本職ローマピザ職人/元飲食広告制作サラリーマン/損益分岐点の低いローコストほのぼの飲食経営スタイル広めて、飲食業界を過労しなくても成功する世界にしたい/全国750社参の飲食経営勉強会の2019年MVP経営者💖←参加企業募集中(個人店OK)

プロフェッショナルな手抜き

物凄く長く、しかも真面目に野球について語ってしまったのでたたんでみました。要約すると『消化試合である阪神対ヤクルトをいかにして楽しんだか、キーワードは記録、記録がもたらすプラス作用、記録にこだわる岡田監督が作った最高の舞台について、その裏側にあるプロフェッショナルな建前、野球おもしろ』です!野球好きな人は読んだらいいんじゃないかな!


2年前もセリーグの優勝が決まった翌日という出来立てほやほやの消化試合神宮球場に見に行くという苦行に興じた僕ですが、今回も行ってきましたよ、勝っても負けてもこの先の順位が変わらない試合に。阪神VSヤクルト、阪神にとって今シーズン最終戦。生粋の阪神ファンの僕でもこのままだとクソ盛り上がらない状況のまま試合に赴くことになるので、頭をひねって試合の見所を必死に練り上げてみました。


キーワードは記録。


長嶋茂雄新庄剛志などの野球界のスーパースターを評する言葉の中に『記録よりも記憶に残る名選手』というものがあります。記録という結果よりも圧倒的エンターテイメント性を持った存在感で人々の心に思い出を焼き付けるプロフェッショナル。だけれども、彼らはキャラクターが人々の記憶に残るのであってプレー内容をこと細かく覚えてるファンは少ないと思います。


さて、伝統的に地味な阪神タイガース選手達。この中でここ数年騒がれている大スターがいます、藤川球児。オールスター戦での全球全力ストレート勝負を演じたVS小笠原戦など、数々の名勝負で野球ファンに強い記憶を植えつけたと思います。が、キャラ立ちは強くない、なんか地味、すごいんだけどね、球は、うん、顔とか可愛いけどしゃべり普通だし、うん、球はすごすぎるんだけどね。


記憶というものは人々の心に主観的に残るものだから、時間が経つにつれて風化されたり過小評価されたり大げさに捏造されたり、藤川への絶対的な評価は不安定なものになると思います。ですが、記録というものは絶対的なものです、誰が見ても数値は変わらない、客観的な評価、風化しない。記録をもとに記憶を語ることが出来ます。凄い記録があればずーっと褒められる!


だってさ、誰だってちやほやされたいじゃん!みんなに『凄いねー』とか言われたらモチベーションあがっちゃうじゃん!やる気が出たら大活躍してまた凄い記録作れちゃうじゃん!絶対的なものを持てれば生きてく自信になる!


ということで、記録が残ると残らないでは全然違う精神状態を生むことになる。それをコントロールすればチームを強くすることが出来る。阪神の岡田監督は特に記録にこだわる。インタビューで何度も藤川の記録に言及してたし、今日の試合でも休養が充分でないにも関わらず新人王がかかった上園啓史を先発投手に使ったり、レギュラーの赤星憲広(腰痛ってのもあるんだろうけど)をあえて外して代打で1打数1安打させることにより2割台だった打率を一流打者の証である3割に到達させたり、無失点だった上園に代えて最多登板記録更新中の久保田智之を使ったり、とにかく記録にこだわった最終戦。その中の目玉、藤川球児のシーズン最多セーブ日本記録。


ここまで藤川は一試合を残して45セーブ。日本記録は中日岩瀬が2005年に作った46セーブ。今日記録を達成出来なかったら記録更新は来年以降に持ち越し。えー、だりー、だってさー、最近藤川さん打たれてたしー、なんか疲れ溜まってるしー、ここであと一歩届かなかったーってなったらすげえテンションさがりそう、この先やる気でねえかもお・・・。


ってことで、藤川を来年以降も最強の投手として気持ちをキープさせるには今日記録を作らなきゃいけない。



基本的に最終回1イニング投げるスタイルの藤川のことを考えると、セーブの条件は『3点以内リードの場面で登板し1イニング以上登板 』。つまり、9回裏までにヤクルトに1〜3点差をつけてリードしていなきゃいけない、という状況を作れるかどうかが今日の最大の見所。


試合開始。阪神先発上園は素晴らしいピッチングを展開、繋げる久保田も無難に無失点。ヤクルト先発グライシンガーは低めに抜群のコントロールを見せたくさんの三振を奪うものの、たまに出してしまう四球とヤクルトの守備の稚拙さで3点を失う。途中、古田監督が『代打俺』発動の上でクリーンヒットを繰り出し、阪神ファンヤクルトファン関係なく球場大盛り上がりなるも、全体的に見たらやっぱり消化試合、クソ試合。つまんない。


さて、試合は進み、9回表で阪神の攻撃。なんと、阪神3−0ヤクルト。岡田監督の気持ちを勝手に決め付けますけど、たぶん『俺の采配すげえええええええ!!』ってなってたと思う、最高の舞台演出。ここで最後の詰め。一点でも阪神が取ってしまうと、4点差になり、藤川の記録は作れない。ということは、1点でも取っちゃダメ!


ここで建前の倫理性が問題になってくる。普通に考えると岡田監督は選手に向かって『ねえ、もう、君らテキトーに三振とか内野ゴロしてアウトになってきてよ』って言いたいところ。だけど、プロ野球はファンあってのもの。プレーに手抜きあっていいの?ダメでしょ?プロっていっつも真剣に自分の力を最大限に引き出して勝負するものでしょう?真剣勝負が大前提!


ということで、ここは暗黙の了解、不文律。空気読まなきゃ。手抜きがばれないように真剣に手抜きをするんだ!これが阪神打者に課せられた命題。本音と建前を両立させるプロフェッショナルを見れるのではないかと僕は興奮した。


先頭バッターは葛城育郎、8年目のベテラン。僕はじっと葛城の手元を見た、絶対に不自然な行動を取るはず、それをいかに自然に見せてくるか、わくわく!ヤクルト投手館山が投じた四球目、葛城やりおった!バットを振る速度がいつもより明らかに遅い、これでは打てても外野までいかない、アウトになる。しかも、左打者の葛城は打球を右方向に引っ張っている、引っ張るということは力がいる、バットを早目に振るということ、弱い遅いスイングなのに引っ張っているから思いっきり振っているように見える、まるで真剣勝負かのよう!本気の手抜き!マジでやろうと思ってやったことなのかなあ、すげえ。おもしろ!


続くバッターは、野口寿浩、18年目の超ベテラン。葛城と同じ考えで打席に入ったのだろうと予測。プロの粋な建前、また見れるかも!しかし、誤算。まさかの死球!野口の手にぶつけられた!最悪だ!ランナーが出てしまった!ヤクルトの守備は荒い、打つ気がなくてもエラーなどでランナーが帰ってしまうかも!点はいる可能性出てきた。しかも今日の試合を作ってきたキャッチャー野口、手に怪我を負ってしまった。岡田監督はどうするか?


代打、小宮山慎二、将来期待の捕手、だけどプロに入って一度も試合に出たことがない選手。僕は疑問を持つ。シーズン最終戦、キャッチャーの絶対的な後継者がいない阪神にとっては小宮山に経験をつけることは大事で良いチャンス、ここでプロ初ヒットが出れば来シーズンに向けて自信がつく、だけど、打っちゃうと点入っちゃうかも!プロ初打席で打っちゃダメって空気を読ませるのはしんどすぎるのではないか?うーん。


結果は三振。まさか、小宮山が打てるわけないと判断して、一軍の試合に出るという経験だけつませようとしたのだろうか?こええ、岡田さん怖いよ。続く、バッター赤松真人、打撃は弱い、1割打者。当然のように凡退。岡田さんは小宮山、赤松が連打する可能性は低いと判断したのだろうか。とにもかくにも、建前を堂々と通しきった。


狙い通りの9回裏、藤川登板。危なげなくゲームセット、勝利、日本記録達成!これで藤川は記憶だけじゃなく記録としても、最強の守護神という地位を確立した。この記録がチームにもたらす精神的プラス作用は、たぶん、すごいんじゃないかなあ。うん、勝つね、3位だけど、日本シリーズも勝っちゃうね!本当に日本一になってしまったら、岡田監督の記録へのこだわりは歴史に残るほどものすごい名采配になるんだろうなあ。僕にとっては、消化試合を無理やりに楽しむための視点作りだったけども、とても興奮出来た面白すぎるヤクルト戦最終回の心理攻防でした、レジェンド。