元裸族のメガネバー
『マスター*1、今日はきついのを頂戴。』
『どうぞ』
『わあ、すごい度、視力0,01人用のメガネだわ、私は普段は伊達メガネなのに。』
『あまり、かけすぎないようにしてくださいね。』
『ありがとうマスター、でも聞いて、私、伊達じゃないメガネをかけてる彼に振られたの』
『・・・・・・』
『だから、忘れたくて自棄になってるの、強いのをかけて世界をぼやけさせたいの』
『お目はお大事に』
『えへ、ねえ、変わったメガネ無い?』
『そうですね、これなんかはいかがでしょうか?』
『わあ、すごい!度入りゴーグルね!』
『ゴーグルだと不意に外れることが無いですから、いきなり現実世界に戻ることがないので、どうぞこの店にいる間はゴーグルでぼやけていてください』
『ありがとう・・・・・』
『・・・・・・・・・・どうぞごゆっくり』
『・・・・・・・・・あー』
『・・・・・・・・・お客様、少しかけすぎじゃないですか、もう6本目ですよ』
『うるさーい、今日はいいーの!』
『フラフラになるまでかけると家に帰れなくなりますよ。』
『うるさーい!今日はとことんキツイ度のメガネをかけるぞー!次はべっこうフレームよ!』
『・・・・・・・・しかたありませんね、・・・・どうぞ』
『え!?ピンク色レンズのサングラス!しかも度が入ってない・・・。私、そんなの頼んでないよ。』
『あちらのお客様からです』
『・・・・ステキ!メタルフレームなのに野生的な男性だわ・・・・。』
『どうぞかけてみてください、あなたの世界を桃色に変えたい、というメッセージをあの方からお預かりしています。』
『マスター!!ありがとう、少しお話してくるわ。』
『どうぞ、ライオンキングが生まれるような大切なこの夜をお楽しみください。』
今夜もメガネバーでは新しい出会いが生まれる。
*1:マスターは裸族としてサバンナで生まれ育ったので視力は10、医者からメガネをかけるなと言われているが、彼はかたくなにビン底メガネに度を入れるのだ、マスターを全裸にひんむいても怒らない(むしろ嬉々とした豊かな表情になる)がメガネを奪うと大外狩りで攻撃してくる、マスターの部屋のぬいぐるみは全てメガネをかけている