無色戦隊ストレンジャー高橋
せ 『聞いて聞いて。』
友 『おう、今日はツッコミ頑張るね。』
せ 『俺な、新しい戦隊モノ考えた。』
友 『お、すごいな、ゴレンジャーみたいなやつやな、どんなん?』
せ 『無色戦隊ストレンジャー!!』
友 『無色?』
せ 『ふっふっふー♪』
友 『普通は赤レンジャーとか、戦隊モノに色は必須なのにな、あ、テーマソングが始まってる。』
せ 『ふっふっふー♪ヘイ!!』
友 『ふっふっふー♪ヘイ!!』
せ 『俺達には色がないー!無色!無色なのさー!』
友 『うん。』
せ 『敵は強いぞー♪水性絵の具戦隊カラーマニアレンジャー♪』
友 『え、敵も戦隊なの?敵も正義の味方なの?』
せ 『平和な世界で俺らの存在感示すためー♪いつまでも続く内輪もめー♪』
友 『自作自演のヒーローかー。』
せ 『絵の具戦隊のせいでクリーニング代がかさむぜー♪』
友 『せめて油性で攻撃したらもうちょっと派手になるのにな。』
せ 『いや、まあ、そうやけどね、そんなことしたら取り返しつかんし。』
友 『うん、まあな。』
せ 『で、な、無色戦隊はそれぞれに色が無いねん、個性が無い。』
友 『うん、ヤル気無さそう。』
せ 『名前がみんな高橋やし。』
友 『えー、家族でヒーローなの!』
せ 『いや、全員他人、赤の、いや、無色の他人。』
友 『何やねん、無色の他人って。』
せ 『ん?あー、あ、考えてなかった。でも、あ、うん、じゃあ、無表情か無臭か、どっちかで。』
友 『そうか。』
せ 『1丁目から5丁目の各地から高橋さんが集まってくるねん。』
友 『地味やなあ。』
せ 『バス亭に。』
友 『絶対、移動しやすいようにって考えてるやん。』
せ 『でも、たまに、7丁目の高橋さん家に集まる。』
友 『ややこし。』
せ 『ごくまれに、3丁目の佐藤さん家に集まる。』
友 『佐藤さんは高橋って名前と関係ないやん。』
せ 『いや、佐藤さんは高橋って名前にめっちゃ改名したいと考えてるねん。』
友 『佐藤さんも立派な名字やのに。』
せ 『そうやねんけど、佐藤さんは高校時代に高橋って名前の女子に片想いしててん。』
友 『お、それで、高橋って名前に憧れてるのか。』
せ 『佐藤さんは振られてな。』
友 『そうか。』
せ 『その高橋さんはな、「私、鈴木さんとはもう、同じ日に筋肉痛になりたくないの!今日だってふくらはぎが痛い!鈴木さんだって痛むでしょ!ふくらはぎが!ふくらはぎが!なんで同じ日に同じふくら!そして、はぎ!」って振ったわけや。』
友 『え、それ、鈴木さんの話じゃないの?』
せ 『ごめん、今の戯言、それは高橋さんの大学時代の話だった、佐藤さんは大学行けなかったの、入試に落ちてしまって。』
友 『そうか、今の話は流せばよかったな、ごめん、俺、気が利かなくて。』
せ 『いいよ、大丈夫、佐藤さんだって頑張って生きてるんだから。』
友 『うん。』
せ 『それなりに幸せなんだってさ、高橋さんに囲まれて生きる生活が。』
友 『そっか。』
せ 『なあ、今度さ、佐藤さんに「高橋さん!」って呼びかけてやれよ、すっげー喜ぶと思う。』
友 『まじで?』
せ 『うん。』
友 『あ、ごめん、俺、今からバイト。』
せ 『え?まじで?』
友 『うん、高橋さんによろしくな。』
せ 『ああ、わかった。』
友 『じゃあ、行ってきます、公園の滑り台の角度を調整するバイトに。』
せ 『うん。』
友 『じゃ。』
せ 『それでは歌いますね。無色戦隊ストレンジャー!いつだって目立たない俺♪クラスメイトに高橋8人、いつだって俺は8番目の高橋だったのさ♪そして猫舌だったのさー♪』