大阪のローマピザ職人しもせのホワイト飲食経営論的な何か

年商2億円・年間休日130日のホワイトなイタリア居酒屋とラーメン屋を6店舗経営/本職ローマピザ職人/元飲食広告制作サラリーマン/損益分岐点の低いローコストほのぼの飲食経営スタイル広めて、飲食業界を過労しなくても成功する世界にしたい/全国750社参の飲食経営勉強会の2019年MVP経営者💖←参加企業募集中(個人店OK)

音が減ることはこの先何度だってあるから

水が流れているから川なのであるとは言い切れませんが桜の花びらが流れているのならばそれはきっと川なのでしょう、黒ずんだボロいアパートとの対比はそこの住人としては何だか場違いな気もして恥ずかしいのですがこの季節だけは私も遠慮がちに桜色に染まるのでした、遠慮がちに、私はぐつぐつ煮えたぎった鍋を持って桜に侵食された黒い狭い川に流すのです、川に冷やされた鍋は猫舌の私にはちょうど良いぬるさで煮込まれたリカちゃん人形の形に切られた豚バラ肉は女性の肌が上気したかのように桜色でございました、イベリコ豚でした。平日とは違った週末の人通りはとても穏やかで足早に駅へと急ぐ人たちも立ち止まり見事な桜に目を数秒間奪われた後、さらに足早になり数秒間のロスを取り戻そうとするのですが顔は自然な笑いがこぼれておりましたが、川下で豚肉でままごとをやっている私の姿を見ては驚愕して笑顔をどんどんぶちこわされていったものでありました。力強く育った桜の枝はまるで門のように私達の道を枠取るのですが、その門をくぐったところで道は何も変わらないのでございます、その門の下で立ち止まることに粋を見出すべきなのでしょうか、私を始め、この道を通る人間は誰しもが桜の花びらの見事さに心を射抜かれ圧倒的な枝の門を見上げることで、心を叩かれてしまうのでしょう、ならば私は下を向いて歩こう、鍋を持って。門をくぐる辛さ、くぐっても変わらない辛さ、私はどうしても耐えることが出来ず桜から目を逸らし、隣の部屋に住むおばさんの干された湿った下着越しにまだ咲いていない桜を見ては世俗的に陥る安定を取り戻すのでした。この下着はベージュ、とてもくたびれている。部屋の中からは掃除機の騒音。なあ、おばさん、掃除機をかけてみなよ、違う、そうじゃない、と優しく耳元でささやきかけながらおばさんの掃除機を持つ手に僕は柔らかに右手を重ねる、そう、僕が触れていてあげるから押してみて、弱ボタンを、強じゃないんだ、そう、そう、静かだね、いいよ、やれば出来るじゃないか、さあ、ご褒美のキスだよ、熱い口付けを交わすとみるみるとおばさんの顔に水分が戻ってきた、さあ、夜はこれからだよ、さっき買ってきたお惣菜を食べよう、おから5パックだよ、僕は気持ち悪い妄想にあけくれることで桜の美しさを殺しては後悔するのでありました。